出血時の注意事項
- ティッシュペーパー使用禁止
- 必ず綿球を使用する
- 出血時の水分補給(薄めのスポーツドリンク)
- 鼻充血を避ける
オスラー病患者の鼻血止血法は一般の鼻血止血法とは異なります。
鼻出血は日常生活(QOL)に大きな影響を与え、適切な対応が求められます。
しかし、多くの問題点が存在し、患者さんやその家族にとって大きな課題となっています。
オスラー病患者の鼻腔内血管状況
毛細血管拡張(Telangiectasia)
- 鼻腔内の毛細血管が異常に拡張し、表面に近くなるため非常に脆くなります。
- これらの血管は正常な血管よりも薄く、破れやすいため、軽微な刺激や温度変化でも出血しやすくなります。
- 毛細血管拡張は主に鼻中隔、鼻翼、鼻孔周囲に見られます。
鼻出血の頻度と重症度
- 鼻出血はオスラー病患者のほぼ全員に見られる症状で、頻度や重症度は個人によって異なります。
- 出血の頻度は週に数回から毎日、出血量も少量から大量まで幅があります。
- 重症の場合、出血が止まりにくく、貧血や鉄欠乏症を引き起こすことがあります。
- 加齢により増加する傾向があります。
出血の引き金
- 乾燥した空気、アレルギー反応、風邪などの鼻粘膜の炎症が出血を引き起こしやすくなります。
- 物理的な刺激(鼻をかむ、鼻を触るなど)、くしゃみ、下を向くなども出血の原因となります。
鼻腔内の出血管理と治療
予防措置
- 鼻腔内を湿らせるためにワセリンや純蜂蜜の塗布(蜂蜜アレルギーには注意)、生理食塩水スプレーや加湿器の使用が推奨されます。
- 刺激を避けるために、鼻を強くかむのを避け、アレルギーの管理を行います。
推奨されない局所治療
- レーザー治療:拡張した毛細血管をレーザーで焼灼することで出血を減らしますが、その後重篤な症状になる患者が多いです。
- 焼灼術:電気や化学薬品を用いて異常血管を焼灼し、一時的に出血を防ぎますが、その後重篤な症状になる患者が多いです。
薬剤
- トランサミン(止血剤)・アドナは推奨していません
重症例の治療
- 鼻粘膜の再建手術や移植手術が検討される場合があります(慎重な検討が必要です)。
- 緊急の場合は鼻タンポンやカテーテルを用いた圧迫止血が行われます。一時的に効果はありますが、周辺の脆い拡張血管を破壊するため重篤な症状になることがあるので注意が必要です。
生活管理
日常生活の工夫
- 鼻腔内を乾燥させないよう注意し、加湿器や生理食塩水スプレーを使用する。
- 衝撃を避けるため、スポーツや激しい運動は控える。
- 出血が頻繁に起こる場合は、医師の指導の下、鉄剤の補給や輸血を行う。
定期的な医療チェック
- 専門医による定期的な検査を受け、適切な治療と予防策を継続的に行うことが重要です。
オスラー病の鼻腔内の血管状況は非常にデリケートで、適切な管理と治療が不可欠です。患者会やHHTJAPANなどの医療専門家との綿密な連携を通じて、出血の頻度や重症度をコントロールし、生活の質を向上させることが目指されます。
よくある問題とその対処法
1. 頻繁に繰り返す鼻出血 オスラー病の患者は、普通の人よりもはるかに頻繁に鼻出血を経験します。この繰り返し発生する鼻出血は、患者さんの日常生活や仕事に大きな障害をもたらすことがあります。
2. 耳鼻科医による診療拒否の問題 残念ながら、患者会にはオスラー病に対する理解が不足しているため、耳鼻科の医師による診療拒否が報告されることがあります。これにより、オスラー病の診断・適切な治療を受ける機会が限られてしまう場合があります。
3. 不適切な処置の問題 オスラー病の患者に一般的な鼻出血の治療と同じ治療が行われることがあり、これが逆効果になり重症化することがあります。オスラー病においては、鼻の血管が非常に脆いため、強く鼻をつまんだり、電気焼灼術、パッキング、レーザー止血などの処置が逆に出血を悪化させます。これらを防ぐにはオスラー病に詳しい耳鼻科医を探すか、医師に明確に主張することが重要です。
4. 専門医の受診が重要 オスラー病の鼻出血に対しては、この病気を理解し、適切な治療を提供できる専門医の受診が推奨されます。専門医による適切な診断と治療は、出血の頻度を減少させ、患者さんの生活の質を向上させることができます。
まとめ
オスラー病は日常生活に影響を及ぼす可能性のある重要な病気であり、患者さんと医療提供者の間での理解と協力が不可欠です。患者さん自身が病気について知識を持ち、専門医の受診を心がけることが、この病気による困難を克服する鍵となります。
実践編:鼻血の問題点と対処法
耳鼻科などで止血処置を受ける場合
- 「サージセル」などの止血剤で治療するように要請することが必要です。
- 詳細は、HHT Q&A冊子(P14~17)を参照。
鼻血の日常のケアと止血
- 基本は保湿(ワセリンや純蜂蜜の塗布:蜂蜜アレルギーには注意)
- トランサミン錠などの止血剤の服用(医師に相談する)
- ティッシュペーパーの使用禁止
- 緊急時以外は止血の電気焼灼術やレーザーは不可です。止血が困難になったり、血管拡張が憎悪する可能性があります。メンバーの中には、これらの処置を繰り返したために止血困難になり、毎週救急搬送され輸血を行っている方もいます。
緊急時
- サージセルなどの止血材料を使用し、軽く圧迫止血することが基本です。
- 重症(命に関わるような状況)でやむを得ない場合を除き、「パッキング」(ガーゼを鼻腔に詰め込む)することは、オスラー病の多数ある脆い血管を傷つけてしまい、処置後に鼻血が悪化し止血困難になるケースが後を絶ちません。
オスラー病の患者には「ボスミン」による血管収縮は期待できず、ガーゼを抜こうとすると再出血の原因となるため、ガーゼパックの操作は意味がないとされています。
患者会には多くの相談が寄せられてきています。
(運営は患者がボランティアで対応しています)
問合せには、ホームページ「問合せフォーム」「メール」を御利用下さい。
なお、ネットできない方に限り電話での対応を行っています。
参考資料
自身で申告できない方は以下のPDFを印刷して、主治医に渡してください。
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