PAVM(肺動静脈瘻)とAVM(動静脈奇形)は、いずれも動脈と静脈が異常に直接つながる血管の異常ですが、それぞれの特性や発生部位に違いがあります。以下でその違いを解説します。

1. 発生部位

  • PAVM(Pulmonary Arteriovenous Malformation, 肺動静脈瘻)
    • 発生部位:PAVMは主に肺に発生します。肺の動脈と静脈が異常につながっており、肺の毛細血管を経由せずに血液が直接静脈に流れ込む状態です。
    • 主な影響:酸素化が行われない血液が全身に流れることで、低酸素血症や脳梗塞、脳膿瘍などのリスクが高まります。
  • AVM(Arteriovenous Malformation, 動静脈奇形)
    • 発生部位:AVMは、脳や脊髄などの中枢神経系、消化管、皮膚、四肢などさまざまな場所に発生します。AVMでは、毛細血管を介さずに動脈から静脈への直接的なシャント(短絡路)が形成されます。
    • 主な影響:発生部位に応じて異なりますが、例えば脳AVMの場合、脳出血やてんかん発作、神経症状などが起こる可能性があります。

2. 病態と合併症

  • PAVM
    • 病態:肺で酸素化されない血液が体循環に直接流れ込むため、酸素不足により低酸素血症が生じます。また、異常な血流により血栓が脳や他の臓器に運ばれるリスクがあり、脳梗塞や脳膿瘍などを引き起こすことがあります。
    • 合併症:低酸素血症、脳梗塞、脳膿瘍、疲労感、息切れなどが一般的です。
  • AVM
    • 病態:動脈と静脈が異常に接続されることで、高圧の動脈血が直接静脈に流れ込むため、血管が破裂しやすくなります。脳AVMの場合、これが脳出血につながることがあります。その他、血流が正常な経路を外れてしまうため、発生部位に応じた局所的な症状が現れます。
    • 合併症:脳AVMでは脳出血、てんかん発作、神経障害など、消化管AVMでは消化管出血などが起こる可能性があります。

3. 診断と治療

  • PAVM
    • 診断:胸部X線、CTスキャン、酸素飽和度の測定、心エコー検査などが行われます。
    • 治療:カテーテルを用いた塞栓術(コイルエンボリゼーション)が主な治療法です。外科的切除が必要な場合もあります。
  • AVM
    • 診断:MRIやCTスキャン、脳血管造影、エコー検査などが行われます。
    • 治療:発生部位や症状により異なりますが、放射線治療(ガンマナイフ)、カテーテルによる塞栓術、外科的切除が主な治療法です。

4. 発生率と遺伝性

  • PAVM
    • 発生率:比較的まれで、オスラー病(遺伝性出血性毛細血管拡張症)に関連して発生することが多いです。
    • 遺伝性:オスラー病が原因の場合、遺伝性があります。
  • AVM
    • 発生率:一般的に稀ですが、PAVMよりも発生頻度が高いです。特に脳AVMは比較的よく知られています。
    • 遺伝性:多くの場合は非遺伝性ですが、特定の遺伝性疾患に関連していることもあります。

まとめ

PAVMとAVMはどちらも動脈と静脈の異常な接続を含む病態ですが、発生する場所と合併症、治療方法が異なります。PAVMは肺に特異的で、酸素化の不全による全身性の影響が強く現れるのに対し、AVMは体のさまざまな部位に発生し、特に脳や脊髄に発生した場合は、出血や神経症状が主な合併症となります。

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